モロッコ代表の愛称は「アトラス・ライオンズ」。その強さを語るうえで重要なのが、監督によって進化してきた戦術だ。
2022年のワリド・レグラギ体制と、2026年のモハメド・ワウビ体制では、チームの基本的な考え方に違いがある。
2022年:レグラギ監督が築いた堅守速攻2022年8月~2026年3月
レグラギ監督が構築したチームの特徴は、コンパクトな守備ブロックと素早いカウンターだった。
相手にボールを持たせても、中央のスペースを簡単には使わせない。中盤と最終ラインの距離を縮め、相手をサイドに誘導しながら、ボールを奪った瞬間に前線へ攻撃を仕掛ける。
この戦術が最も効果を発揮したのが、2022年カタール大会だ。モロッコはベルギーを2-0で破り、決勝トーナメントではスペインをPK戦で撃破。準々決勝でもポルトガルに1-0で勝利した。
優勝候補を相手にしても守備組織が崩れにくく、GKブヌの好セーブも加わったことで、アフリカ勢初のワールドカップ準決勝進出を実現した。
2026年:ワウビ監督が導入した攻撃的サッカー2026年3月就任
2026年3月5日、モロッコサッカー連盟はレグラギ監督の後任としてモハメド・ワウビをA代表監督に任命した。
ワウビはベルギー生まれの指導者で、アンデルレヒトの育成組織などで指導経験を積んだ人物だ。2025年にはU-20ワールドカップでモロッコを初優勝に導いている。
ワウビ体制では、従来の堅守速攻に加えて、前線からの積極的なプレス、高い守備ライン、ボール保持を重視するスタイルが導入された。
ロイター通信の2026年6月30日付報道も、レグラギ体制の守備重視・カウンター主体のスタイルと比較し、ワウビ体制では積極的なプレスとポゼッション型のサッカーに変化したと分析している。
モロッコの守備戦術とカウンターは今も武器なのか答えはYESだ。ただし、2026年のモロッコは守備だけで勝つチームではなくなっている。
ハキミやマズラウィのような攻撃参加に優れたサイドバックを生かし、ボールを奪ってからの速攻と、相手陣内でボールを奪い返すハイプレスを使い分ける。
中盤では、アムラバトの守備能力に加え、エル・アイナウイやブアディのような選手がボール奪取と配球を担う。さらにウナヒやサイバリが前方へ運ぶことで、守備から攻撃への移行をスムーズにしている。
2026年大会のオランダ戦では、約70%のボール保持率を記録したと報じられた。かつてのモロッコなら守備を固めて相手のミスを待つ場面でも、現在は自分たちで試合をコントロールする選択肢を持っている。
ただし、高い守備ラインには背後のスペースを使われる危険もある。攻撃的な戦術を採用するほど、選手間の連係とボールを失った直後の守備対応が重要になる。フランスのような個人能力と攻撃の速度を兼ね備えた相手にどう対応するかは、今後の課題だ。
【2026年最新】モロッコ代表の海外組選手一覧と注目選手

モロッコ代表の競争力を支えるのが、欧州や中東のクラブでプレーする選手たちだ。2026年ワールドカップ登録メンバーの所属クラブを見ると、各ポジションに国際経験豊富な選手が配置されている。
主な海外組選手と所属クラブ以下は2026年ワールドカップ登録時の所属先を基準にした主な選手一覧だ。
ゴールキーパー
- ヤシン・ブヌ:アル・ヒラル(サウジアラビア)
ディフェンダー
- アクラフ・ハキミ:パリ・サンジェルマン(フランス)
- ヌサイル・マズラウィ:マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
- ナイフ・アゲルド:オリンピック・マルセイユ(フランス)
- シャディ・リアド:クリスタル・パレス(イングランド)
- イッサ・ディオプ:フラム(イングランド)
- ザカリア・エル・ワフディ:ヘンク(ベルギー)
ミッドフィルダー
- ソフィアン・アムラバト:レアル・ベティス(スペイン)
- アズディン・ウナヒ:ジローナ(スペイン)
- ビラル・エル・ハヌス:シュトゥットガルト(ドイツ)
- イスマエル・サイバリ:PSV(オランダ)
- ニール・エル・アイナウイ:ASローマ(イタリア)
- アイユブ・ブアディ:リール(フランス)
- チェムスディン・タルビ:サンダーランド(イングランド)
フォワード
- ブラヒム・ディアス:レアル・マドリード(スペイン)
- アブデ・エザルズリ:レアル・ベティス(スペイン)
- アユブ・エル・カービ:オリンピアコス(ギリシャ)
- スフィアン・ラヒミ:アル・アイン(UAE)
- ジェシム・ヤシン:ストラスブール(フランス)
選手の登録時所属は、FIFAの大会登録資料および各クラブの代表招集発表に基づく。
特に注目したい5人のキープレーヤー
1.
DF/パリ・サンジェルマン
モロッコの攻撃を象徴する右サイドバック。スピード、突破力、守備への戻りを兼ね備え、攻守両面で大きな役割を担う。
2.
GK/アル・ヒラル
2022年大会で世界的な評価を高めた守護神。PK戦での対応力と冷静な判断が強み。2026年オランダ戦でも勝利に貢献した。
3.
MF/レアル・マドリード
狭いエリアでのボールコントロールとドリブルが魅力。相手の守備ブロックを崩す攻撃のアクセントになる。
4.
MF/レアル・ベティス
中盤でのボール奪取と守備のバランスを担う選手。攻撃的な選手が前に出られる環境を整える。
5.
MF/PSV
前線への飛び出しとゴールへの積極性が特徴。2026年ワールドカップでは3得点を挙げ、オランダ戦のPK戦でも決定的な役割を果たした。
この選手層の強みは、単に有名クラブに所属する選手が多いことではない。守備、組み立て、サイド突破、フィニッシュという異なる仕事を、国際レベルの経験を持つ選手が分担できることにある。
【アフリカ最強なのか?】モロッコ代表の歴代成績と世界での評価
モロッコは現在、アフリカを代表する最強候補の一角だ。FIFAランキング5位という数字だけでなく、ワールドカップで積み重ねた実績にも、その評価を裏付ける根拠がある。
モロッコ代表の主な歴史的成績
1970年:初のワールドカップ出場
メキシコ大会に出場。アフリカ勢の国際舞台での存在感を示した。
1976年:アフリカネーションズカップ優勝
アフリカの頂点に立ち、代表史に残るタイトルを獲得。
1986年:ワールドカップベスト16
グループリーグを突破し、アフリカ勢として初めて決勝トーナメントに進出した。
2004年:アフリカネーションズカップ準優勝
大陸大会でも再び決勝に進出。
2022年:カタール大会ベスト4
アフリカ・アラブ勢として初のワールドカップ準決勝進出。最終順位は4位。
2025年:U-20ワールドカップ優勝
若年カテゴリーでも世界タイトルを獲得。
2026年:ワールドカップベスト8
ブラジル、オランダなどと対戦し、2大会連続で世界の上位8チームに入った。
FIFAの代表チーム紹介では、2022年の4位がモロッコのワールドカップ最高成績として記録されている。2026年の準々決勝進出も、代表の継続的な成長を示す実績となった。
セネガルやアルジェリアなど他のアフリカ勢との違いアフリカにはモロッコ以外にも強豪国が存在する。セネガル、アルジェリア、エジプト、ナイジェリアなどは、いずれも大陸大会やワールドカップで実績を残してきた。
その中でモロッコが際立つのは、欧州トップレベルのクラブで活躍する選手を複数のポジションに配置し、年代別代表からA代表まで育成の流れを整えている点だ。
2026年9月のFIFAランキングでアフリカ勢の最高順位に並んだことも、現在の国際的な評価を裏付けている。少なくともランキングと直近のワールドカップ成績という2つの指標では、モロッコをアフリカ最強候補と評価する十分な理由がある。
それでもモロッコに残る課題一方で、世界ランキング5位だからといって、すべての強豪国に勝てるわけではない。
2026年ワールドカップではフランスに0-2で敗れた。相手の守備を崩し切る攻撃の精度や、強度の高い相手に対する試合終盤の対応など、改善すべき部分もある。
また、代表の中心選手が欧州のクラブに所属していることは強みである一方、所属クラブでの出場状況や負傷によって代表の戦力が変わるという側面もある。
モロッコの真価を判断するには、ランキングだけでなく、強豪国との直接対決、選手層の厚さ、世代交代の進み具合を合わせて見る必要がある。
【よくある質問】モロッコサッカーの強さに関するFAQ
Q1:モロッコ代表のFIFAランキングは2026年現在何位?
A1:2026年9月30日に発表されたFIFA男子世界ランキングでは5位。アフリカ勢として史上最高水準の順位に到達している。
Q2:モロッコは2026年ワールドカップでベスト8に進出した?
A2:進出した。ブラジルと1-1で引き分け、オランダにはPK戦で勝利。カナダを3-0で破った後、準々決勝でフランスに0-2で敗れた。
Q3:モロッコ代表が強い最大の理由は?
A3:欧州で育った選手を取り込むスカウト網、モハメド6世サッカーアカデミーを中心とする育成改革、組織的な守備、攻撃的な選手層が主な理由だ。
Q4:モロッコ代表の現在の監督は誰?
A4:2026年11月時点ではモハメド・ワウビ。2026年3月にワリド・レグラギの後任として就任した。2025年のU-20ワールドカップ優勝監督でもある。
Q5:モロッコはカタールワールドカップで何位だった?
A5:2022年大会で4位。アフリカ勢として初めて準決勝に進出し、世界のサッカー史に残る結果を達成した。
Q6:モロッコはブラジルやフランスにも勝ったことがある?
A6:ブラジルには2023年3月の親善試合で2-1と勝利している。一方、フランスには2022年と2026年のワールドカップでいずれも0-2で敗れている。
モロッコサッカーが強い理由は、優れた選手を集めるだけでなく、育成、スカウト、戦術、国際経験を一体化させた代表強化の仕組みにある。
2022年カタール大会のベスト4は、堅守速攻を武器に世界を驚かせた歴史的な成果だった。そして2026年大会では、攻撃的なポゼッションサッカーも取り入れ、ブラジルとの引き分け、オランダへのPK戦勝利、カナダへの3-0の勝利を実現した。
加えて、2026年9月のFIFAランキング5位という結果は、モロッコがアフリカの有力国という枠を超え、世界のトップレベルに定着しつつあることを示している。
【プロの結論】モロッコの本当の強さは、堅守速攻という一つの戦術に依存しないことだ。選手層の厚さと育成基盤を背景に、監督が変わっても国際競争力を維持し、試合展開に応じて戦い方を変えられる。この継続性こそ、世界ランキング5位に到達した最大の理由といえる。
もちろん、フランスのような最上位の強豪国を倒し、ワールドカップ優勝を争うには、攻撃の決定力や戦術の完成度をさらに高める必要がある。それでも、2022年の4強と2026年の8強を連続して達成した実績は大きい。
2030年にはスペイン、ポルトガルとともにワールドカップを共催するモロッコ。自国開催を控えた今後の代表強化と若手選手の成長は、世界のサッカーファンが注目すべきテーマだ。