IgA腎症の治療で重要なのは、尿検査の結果だけで判断せず、腎臓の組織や機能を詳しく調べ、進行リスクに応じた治療を選ぶことです。
腎生検はどのように行われる?IgA腎症の確定診断には、一般的に腎生検が必要です。
腎生検は、背中側から細い針を腎臓に進め、組織の一部を採取して顕微鏡などで調べる検査です。採取した組織を複数の方法で観察し、IgAが糸球体のメサンギウム領域に沈着しているかを確認します。
主な検査内容は次のとおりです。
- 尿検査: 血尿や蛋白尿の有無、程度を確認する。
- 血液検査: 血清クレアチニン、推算糸球体濾過量(eGFR)、血清IgAなどを調べる。
- 腎生検: 腎臓の組織を採取し、IgAの沈着や炎症、組織障害の程度を確認する。
- 病理検査: 光学顕微鏡、蛍光抗体法、電子顕微鏡などで組織を評価する。
血清IgAの数値が高いことだけでは、IgA腎症と確定できません。腎生検による病理診断が重要なのは、このためです。
2026年版の診療ガイドラインでも、腎生検の適応や病理所見、新たなバイオマーカーなどが診断分野の主要項目として取り上げられています。
扁桃摘出とステロイドパルス療法とは?日本でIgA腎症の治療として知られているのが、扁桃摘出術とステロイドパルス療法を組み合わせる「扁摘パルス療法」です。
扁桃腺は、口や鼻から入る細菌・ウイルスなどに対する免疫機能に関わる組織です。IgA腎症では、粘膜免疫の異常などが病態に関係していると考えられています。
この治療では、口蓋扁桃を摘出したうえで、ステロイド薬を短期間に大量投与するパルス療法を実施します。ステロイドによって腎臓の炎症を抑えることを目指します。
難病情報センターは、日本から扁桃摘出とステロイドパルス療法の併用が、ステロイドパルス療法単独よりも効果的だとする研究成果が報告されていると説明しています。
ただし、扁桃摘出は全患者に必要な治療ではありません。手術の負担や合併症、ステロイドの副作用も考慮し、腎機能や蛋白尿、病理所見などを踏まえて判断します。
星熊南巫さんと久間十義さんが経験した治療も、この日本で行われている治療法と関連しています。両者の体験は、実際に治療を選ぶ際の生活上の悩みを知る参考になりますが、同じ治療がすべての患者に適しているわけではありません。
治療方法は扁桃摘出だけではないIgA腎症の治療では、腎機能を守りながら蛋白尿を減らし、腎臓の炎症や病気の進行を抑えることを目指します。
| 治療方法 | 主な目的 |
|---|---|
| RA系阻害薬 | 血圧や糸球体への負担を管理し、蛋白尿を減らす |
| ステロイド療法 | 免疫反応や腎臓の炎症を抑える |
| 扁桃摘出術 | 扁桃腺が関与する免疫反応への介入 |
| ステロイドパルス療法 | ステロイドを短期間に大量投与する |
| SGLT2阻害薬 | 腎臓への負担を軽減し、腎機能低下の抑制を目指す |
| 生活習慣の改善 | 減塩、血圧管理、体重管理、禁煙など |
治療の選択は患者ごとに異なります。蛋白尿が多い人、腎機能が低下している人、腎生検で組織障害が強い人では、治療方針も変わります。
また、ステロイドには感染症、血糖上昇、骨への影響などの副作用があるため、治療中の管理も欠かせません。自己判断で薬を中断したり、他人の治療経験をそのまま取り入れたりすることは避ける必要があります。
寛解と完治は違う?再発と予後についてIgA腎症の治療でよく使われる言葉が「寛解」です。
寛解とは、治療によって血尿や蛋白尿が減少・消失し、腎機能が安定する状態を指します。ただし、尿検査の結果が改善したからといって、腎臓の組織に残る変化まですべてなくなったとは限りません。
難病情報センターも、IgA腎症は治癒する疾患ではないものの、早期に治療することで血尿や蛋白尿が減少し、腎機能を長期間維持できる可能性があると説明しています。
一度寛解した後も、再び尿異常が現れたり、腎機能が低下したりする可能性があります。そのため、定期的な尿検査や血液検査による経過観察が必要です。
長期予後については、難病情報センターの資料に、成人発症のIgA腎症では10年間で約15~20%、20年間で約40%弱が末期腎不全に至るというデータがあります。ただし、これは集団としての統計であり、個々の患者の将来を予測する数字ではありません。蛋白尿の程度、血圧、腎機能、腎生検の結果などによってリスクは異なります。
早期発見と適切な治療、長期的な管理が予後を左右する大きな要素です。
【2026年最新情報】IgA腎症の新しい治療と診療ガイドライン

2026年は、IgA腎症の診療にとって重要な動きがありました。特に注目したいのが、9月に発行された新しい診療ガイドラインと、新たな薬剤の承認です。
2026年9月「IgA腎症診療ガイドライン2026」が発行東京医学社から「エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2026」が2026年9月に発行されました。
厚生労働科学研究費補助金による難治性腎障害に関する調査研究班が編集し、大阪大学大学院医学系研究科腎臓内科学の猪阪善隆氏が監修しています。
今回のガイドラインでは、従来からの治療法に加え、次のようなテーマが取り上げられています。
- RA系阻害薬の使用
- 副腎皮質ステロイド薬の使用
- 口蓋扁桃摘出術の有効性
- SGLT2阻害薬の使用
- 新規治療薬候補
- 腎生検や新たなバイオマーカー
- 予後評価と難病申請の適応
特に、抗体産生を抑える治療、エンドセリン受容体拮抗薬、補体制御薬など、新しい治療候補についても章が設けられています。
これは、IgA腎症の治療が従来の血圧管理や免疫抑制を中心とする考え方だけでなく、病気の発症・進行に関わる免疫機構を標的にする方向へ広がっていることを示しています。
2026年9月16日、ファビハルタがIgA腎症の効能追加承認2026年9月16日、ノバルティス ファーマは、経口薬ファビハルタ(一般名:イプタコパン)について、成人IgA腎症への効能・効果の追加承認を取得したと発表しました。
ファビハルタは、補体第二経路に関わる補体B因子を選択的に阻害する薬剤です。IgA腎症に関連する糸球体の炎症や腎障害を引き起こす仕組みの一部に働きかけることを目的としています。
同社が公表した国際共同第III相試験APPLAUSE-IgANの結果では、腎不全への進行リスクの低下や腎機能低下の抑制が示されました。
ただし、新薬が登場したからといって、すべての患者が使用できるわけではありません。対象となる患者、投与条件、安全性、他の薬剤との組み合わせなどを踏まえ、専門医が判断します。
また、薬剤によって病気が完全に治るという意味でもありません。既存治療との位置づけや長期的な効果についても、継続的な医学的評価が必要です。
2026年のIgA腎症をめぐる重要な変化| 時期 | 医療上の動き | 注目点 |
|---|---|---|
| 2026年9月 | 診療ガイドライン2026発行 | 診断・予後・治療を最新のエビデンスに基づいて整理 |
| 2026年9月16日 | ファビハルタの効能追加承認 | 成人IgA腎症に新しい経口治療選択肢 |
| 2026年10月 | 星熊南巫さんが治療経験を発信 | 患者と医療者の対話、治療と仕事の両立に注目 |
芸能人の闘病談と医療の進歩を同時に見ると、IgA腎症は単に病気を治すことだけでなく、仕事や生活を続けながら長期的に管理していくことが大きなテーマになっていると分かります。
【IgA腎症の芸能人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:IgA腎症を公表した芸能人は星熊南巫さんだけですか?
今回確認できた代表的な公表事例は、我儘ラキアの元メンバーである星熊南巫さんです。また、作家の久間十義さんも2021年の日刊ゲンダイのインタビューで闘病経験を公表しています。ただし、久間さんは厳密には芸能人ではなく作家・著名人に分類されます。
Q2:星熊南巫さんは2026年現在、IgA腎症が完治していますか?
2026年10月の報道では、星熊さんはIgA腎症の当事者として治療経験を語っています。患者交流プログラムへの参加も報じられていますが、腎機能の具体的な数値や医学的な寛解・完治の確定情報は公表されていません。
Q3:IgA腎症は指定難病ですか?治療すれば治りますか?
はい。IgA腎症は指定難病66です。早期治療によって血尿や蛋白尿が減少し、寛解を目指すことはできます。ただし、寛解と完治は異なり、定期的な検査と長期的な経過観察が必要です。治療方法は腎機能や病状に応じて選択されます。
IgA腎症を公表した人物として、特に注目されるのが星熊南巫さんです。2023年6月に発症を公表し、同年12月には扁桃摘出手術の経験を本人のnoteで紹介しました。
2025年には我儘ラキアが解散しましたが、星熊さんは2026年もソロアーティストとして音楽活動を継続。9月のインタビューや10月のイベント報道では、IgA腎症の当事者として治療経験や患者交流について語っています。
作家の久間十義さんは、2011年のネフローゼ症候群による入院とIgA腎症の発見、扁桃摘出・ステロイドパルス療法を経験しました。2021年の取材では腎機能が約60%と説明していましたが、これは当時の情報です。
医学面では、2026年9月に新しい診療ガイドラインが発行され、ファビハルタの成人IgA腎症への効能追加承認も発表されました。治療の選択肢は広がりつつあります。
最後に、IgA腎症について知っておきたい判断基準を整理します。
- 芸能人の病気については、本人の公表と報道で確認する。
- 過去の寛解報告と現在の病状を混同しない。
- 血尿や蛋白尿を放置せず、必要に応じて腎臓内科を受診する。
- 腎生検や腎機能の検査結果をもとに治療方針を考える。
- 新薬や扁桃摘出術の適応は、必ず専門医と相談する。
IgA腎症は、早期発見と適切な治療によって長期的な腎機能の維持を目指せる病気です。星熊南巫さんのように、治療と自分らしい仕事・表現活動を両立するための医療との向き合い方も、患者にとって大切な視点になります。
有名人の闘病経験をきっかけに病気への理解を深めながら、医学的な情報は難病情報センター、日本腎臓学会、2026年版診療ガイドラインなどの信頼できる資料に基づいて確認することが大切です。