2026年、広島東洋カープの栗林良吏は、プロ入り後初めて抑えから先発投手へ転向した。2021年の新人王獲得から、球団を代表する守護神として積み重ねてきた実績を持つ右腕が、新たな役割に挑んだシーズンだ。
NPB公式記録による2026年の最終成績は、19試合登板、7勝6敗、防御率2.89、121回1/3、101奪三振。WHIPは0.93で、先発として一定の安定感を示した。一方、シーズン序盤の好投と夏場以降の成績には波があり、先発転向1年目ならではの課題も残した。
なぜ長年務めた守護神の座を離れたのか。新人時代の37セーブや2024年の38セーブと比較すると、栗林の投手としての能力と役割の変化が見えてくる。
【2026年最新】栗林良吏の成績は7勝6敗、防御率2.89
2026年の栗林良吏は、広島の先発ローテーションの一角として19試合に登板した。
守護神時代のように1イニングを全力で抑える仕事から、複数の打席を組み立てながら6回、7回と投げ続ける仕事への転換である。
NPB公式記録に掲載された2026年シーズン終了時点の投手成績は次のとおり。
| 項目 | 2026年成績 |
|---|---|
| 登板数 | 19試合 |
| 先発登板 | 19試合 |
| 勝利 | 7勝 |
| 敗北 | 6敗 |
| 防御率 | 2.89 |
| 投球回 | 121回1/3 |
| 奪三振 | 101 |
| 被安打 | 95 |
| 被本塁打 | 8 |
| 与四球 | 18 |
| WHIP | 0.93 |
| 完投 | 2 |
| 完封 | 2 |
| セーブ | 0 |
| QS | 13試合 |
※NPB公式の年度別投手記録を基礎に、WHIPなどの指標を補足。QSは6回以上を投げ、自責点3以下に抑えた先発登板を指す。
注目したいのは、19試合の先発で121回1/3を投げたことだ。1試合平均に換算すると約6.4イニング。救援投手としての経験を持つ選手が、シーズンを通して先発の役割を担ったことには大きな意味がある。
加えて、13試合でQSを達成しており、QS率は68.4%。2完投、2完封という数字も残した。
一方、7勝6敗という勝敗だけで投球内容を判断するのは適切ではない。投手の勝利数には打線の援護や試合展開も影響するため、防御率、WHIP、奪三振、投球回を合わせて見る必要がある。
2026年の栗林は、圧倒的な成績でリーグを支配したわけではない。しかし、先発として121イニング以上を消化し、防御率2点台を記録したことは、転向1年目の成果として評価できる。
【転向の理由】栗林良吏はなぜ抑えから先発になったのか
栗林の先発転向が明らかになったのは、2025年10月。新井貴浩監督が翌2026年シーズンからの配置転換を明言した。
日刊スポーツやスポーツニッポンなどの報道を整理すると、背景には大きく3つの事情があった。
右肘手術後のコンディションと救援登板の負担栗林は2024年10月、右肘の関節鏡視下骨棘切除術を受けた。
守護神というポジションは、試合終盤の重要な場面で登板するため、登板前の準備や肩をつくるタイミングが難しい。試合の流れによっては、登板機会がない日でもブルペンで準備する必要がある。
2025年は開幕から以前のような安定感を発揮できず、5月には勝ちパターンの再編に伴って守護神の役割から外れた。
その後は、同点やリードを許した場面など、さまざまな状況で登板する機会が増加。登板するかどうかが試合展開に左右されるため、ブルペンでの準備も増えていた。
スポニチの2025年10月18日付報道では、新井監督が心身の負担を考慮し、先発転向を決断した経緯が伝えられている。
広島の先発投手陣を強化する必要があったもう一つの大きな理由は、チーム事情だ。
2025年の広島は先発投手陣の防御率が3.42で、前年の2.77から悪化。2桁勝利を挙げた投手もいなかった。
先発ローテーションを安定させ、試合をつくれる投手を増やすことがチームの課題になっていた。
一方、栗林は社会人時代に先発経験があり、複数の球種を使い分けられる。制球力に加えて、クイックやフィールディングにも対応できる総合力を持っていた。
新井監督が評価したのは、単純な球速や抑えとしての実績だけではない。先発として長いイニングを投げるための能力だった。
トヨタ自動車時代の先発経験も生きる栗林はプロ入り前、トヨタ自動車で社会人野球を経験している。
プロでは2021年から救援投手として起用されたが、もともと先発を経験していたことから、今回の転向はまったく未知の役割への挑戦ではなかった。
2026年2月のスポニチ単独インタビューでは、先発転向に伴ってブルペンで投げる球数や投球テンポを意識していることを説明している。
つまり、先発転向は単なる配置換えではない。手術後の身体的な負担、チームの投手事情、本人が持つ先発適性を総合的に判断した決断だった。
【年度別成績】2021年の新人王から2026年の先発転向まで
栗林良吏のキャリアを理解するには、2021年から2026年までの成績を比較することが欠かせない。
特に注目したいのは、2023年の役割変化と2025年の配置転換だ。
| 年度 | 主な役割 | 登板 | 勝敗 | セーブ | ホールド | 防御率 | 奪三振 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021 | 抑え | 53 | 0勝1敗 | 37 | 0 | 0.86 | 81 |
| 2022 | 抑え | 48 | 0勝2敗 | 31 | 6 | 1.49 | 59 |
| 2023 | 救援 | 55 | 3勝7敗 | 18 | 15 | 2.92 | 51 |
| 2024 | 抑え中心 | 60 | 0勝6敗 | 38 | 12 | 1.96 | 65 |
| 2025 | 救援・配置転換 | 55 | 1勝1敗 | 10 | 23 | 2.24 | 54 |
| 2026 | 先発 | 19 | 7勝6敗 | 0 | 0 | 2.89 | 101 |
※NPB公式記録をもとに作成。ホールドは公式記録のホールド数。WHIPなどの詳細指標は年度別の補足データを参照。
2021年:プロ1年目から守護神として大活躍2021年は栗林にとって、プロ野球選手としての評価を決定づけたシーズンだった。
広島のドラフト1位で入団すると、開幕から抑えに抜擢された。
53試合に登板して37セーブ、防御率0.86。新人ながら最後の1イニングを任され、期待に応える結果を残した。
特に37セーブは、2015年の山﨑康晃が記録した数字に並ぶプロ野球新人タイ記録だった。
2022年:31セーブで守護神としての地位を確立2年目も48試合で31セーブ、防御率1.49を記録。
新人時代の勢いだけではなく、継続して高い水準の投球ができることを証明した。
この時期の栗林は、広島の終盤を任せられる絶対的な存在だった。
2023年:セーブ数が減少し、役割にも変化2023年は18セーブ、15ホールド、防御率2.92。
前年までの守護神としての成績と比べると、数字に変化が表れている。
勝敗も3勝7敗となり、救援投手としての登板内容に波が生じた。もっとも、この年の役割の変化は、単純に抑えとしての能力を失ったという意味ではない。
2024年:38セーブで守護神として復活2024年は60試合に登板し、38セーブ、防御率1.96。
38セーブは広島の球団記録に並ぶ数字として報じられた。
2023年の不安定さを払拭し、再びリーグを代表するクローザーとして存在感を示したシーズンだった。
ただし、シーズン終了後には右肘の手術を受けている。
2025年:救援陣の一員として新しい役割へ2025年は55試合で10セーブ、23ホールド、防御率2.24。
セーブ数は前年から大幅に減少したが、ホールド数が増加している。
守護神として試合を締めくくる役割から、勝ちパターンを支える救援投手へと変化したことが数字にも表れている。
そしてシーズン終了後、先発転向が決まった。
2026年:先発として7勝、防御率2.892026年は19試合すべてに先発。7勝6敗、防御率2.89、101奪三振を記録した。
救援時代の年間50試合以上という登板数から、先発として1試合に長く投げるスタイルへ変わったことが分かる。
登板数だけで比較するのではなく、投球回やQS率を確認することが、2026年の成績を正しく理解するポイントだ。
【投球内容を分析】栗林良吏の奪三振・WHIP・防御率はどう評価する?
2026年の栗林を評価するうえで、特に重要なのが奪三振とWHIPである。
WHIP0.93は先発として高い水準WHIPは、1イニングあたりに許した安打と四球の合計を示す指標だ。
計算式は次のとおり。
WHIP=(被安打+与四球)÷投球回
2026年の栗林は、121回1/3を投げて被安打95、与四球18。WHIPは0.93となった。
つまり、1イニングあたりの安打と四球による出塁を1人未満に抑えている。
特に注目すべきなのは、121回以上を投げながら与四球が18個にとどまったことだ。
四球を簡単に与えない制球力は、先発投手として長いイニングを投げるうえで大きな武器になる。
101奪三振とK/BB5.61が示す制球力2026年の奪三振は101。
奪三振率は9イニングあたり約7.49個で、先発投手として三振を奪う能力も維持している。
加えて、奪三振と与四球の比率を示すK/BBは5.61。
101奪三振に対して与四球18という数字は、打者に無駄な出塁を許さず、アウトを積み重ねる能力を示している。
先発転向によって球威が失われたわけではなく、救援時代からの強みを新しい役割でも発揮できたことが分かる。
先発デビュー戦は圧巻の1安打完封2026年3月29日の中日戦は、栗林の先発転向を象徴する試合となった。
プロ初先発で9回を投げ、被安打1、四死球0、95球で完封勝利を達成。
7回までノーヒットノーランを続ける圧巻の内容だった。
いわゆるマダックスと呼ばれる、100球未満での完封勝利でもある。
長年、試合終盤の1イニングを任されてきた投手が、先発として9イニングを投げ切ったことは大きなインパクトを残した。
夏場以降に見えた課題ただし、シーズンを通して同じ安定感を維持できたわけではない。
2026年の月別成績を見ると、8月は4試合で防御率6.46、9月は4試合で3.38。10月は1試合、4イニングで防御率9.00だった。
特に8月の数字は、シーズン全体の防御率2.89と比べても悪化が目立つ。
先発投手は、対戦相手に同じ球筋や配球を研究される機会が増える。1試合を通して打者と対戦し、2巡目、3巡目にも対応する必要がある。
救援時代のように短いイニングで最大出力を出すだけでは、長期的な安定につながらない。
2026年は先発として十分な可能性を示した一方、シーズン後半の安定感には改善の余地が残った。
【通算134セーブ】栗林良吏の抑え時代の記録と新人王の価値
先発転向後の成績を評価する際にも、救援投手として積み重ねた実績は欠かせない。
栗林は2021年から2025年までの5年間、広島のブルペンを支えてきた。
2021年の37セーブは新人タイ記録2021年の37セーブは、NPBの新人シーズン最多セーブタイ記録。
同年11月1日のヤクルト戦で37セーブ目を記録し、2015年の山﨑康晃と並んだ。
また、2021年3月27日の中日戦では、プロ初登板でセーブを記録している。
新人ながら開幕直後から重要な場面を任され、その期待に応えたことが分かる。
2021年セ・リーグ新人王を獲得2021年12月15日に発表されたNPB AWARDS 2021で、栗林はセントラル・リーグの最優秀新人賞に選出された。
同年の成績は53試合、0勝1敗、37セーブ、防御率0.86。
数字だけでなく、シーズンを通して抑えの役割を果たしたことが高く評価された。
通算134セーブはNPB歴代23位NPB公式の2026年シーズン終了時点の通算記録では、栗林の134セーブは歴代23位。
現役投手に限った通算セーブランキングでは5位に位置している。
2026年は先発に専念したため、セーブ数は増えていない。それでも、プロ入りから短期間で134セーブを積み上げた実績は非常に大きい。
特筆すべきなのは、2021年の37セーブだけではない。
2022年に31セーブ、2024年に38セーブと、30セーブ以上を3度記録している。
2026年の先発転向によってセーブ数は止まったものの、守護神としての実績が失われるわけではない。
【プロフィール・経歴】愛知黎明高校から名城大学、トヨタ自動車へ
栗林良吏は1996年7月9日生まれ、愛知県出身の右投右打の投手だ。
広島東洋カープでは背番号20を着用している。
プロ入りまでの経歴は、愛知黎明高校、名城大学、トヨタ自動車という流れだ。
高校、大学、社会人野球と段階的に経験を積み、2020年ドラフトで広島から1位指名を受けた。
愛西市の公式プロフィールでも、愛知黎明高校から名城大学、トヨタ自動車、広島東洋カープへと続く経歴が紹介されている。
経歴を整理- 1996年7月9日:愛知県生まれ
- 愛知黎明高校:高校野球で投手として経験を積む
- 名城大学:大学野球で活躍
- トヨタ自動車:社会人野球で経験を重ねる
- 2020年10月26日:広島東洋カープからドラフト1位指名
- 2021年:プロ入り、抑えとして37セーブ、新人王獲得
- 2021年:東京五輪の野球日本代表として金メダル獲得に貢献
- 2024年:38セーブを記録
- 2025年:救援で10セーブ、23ホールド
- 2026年:プロ入り後初の先発転向
特にトヨタ自動車時代の経験は、2026年の先発転向を考えるうえで重要だ。
プロでのキャリアは救援投手として始まったが、社会人時代には先発も経験していた。
したがって、2026年の配置転換は、過去の経験を生かしながら投手としての役割を広げる挑戦でもあった。
【現在の評価】先発転向は成功だったのか?2027年への課題
2026年の栗林を評価するなら、先発転向は一定の成果を得たと判断できる。
19試合で121回1/3、防御率2.89、101奪三振、WHIP0.93という成績は、先発投手としての基礎的な能力を示している。
一方で、シーズン後半の防御率悪化や、年間を通しての安定感には課題も残った。
評価できるポイント第一に、長いイニングを投げる能力を示したこと。
19試合で13度のQSを記録し、2完投、2完封を達成した。
第二に、制球力が先発でも通用したこと。
与四球18、WHIP0.93という数字は、走者を出さずに試合を組み立てる能力を示している。
第三に、救援時代の投球技術を維持したこと。
101奪三振を記録し、先発転向後も打者を三振に仕留める力を発揮した。
今後の改善ポイント一方で、2027年以降に向けて重要なのは、シーズン後半の安定感だ。
先発投手は、年間を通じてローテーションを守りながら、相手打線に研究されても投球を修正する必要がある。
特に夏場以降の防御率悪化をどう改善するかは、今後の評価を左右するポイントになる。
また、先発としての経験を積むことで、捕手との配球や試合中の修正能力をさらに高めることも期待される。
栗林自身は2026年のNPB公式コラムで、先発としての目標について次のように語っている。
「自分が登板した試合でチームが勝つということ」
この考え方は、守護神時代から続くチーム優先の姿勢を表している。
抑えとして試合を締めくくる役割から、先発として試合全体をつくる役割へ。チームへの貢献方法が変わったことが、栗林の現在地を理解するうえで重要だ。
【よくある質問】栗林良吏に関するFAQ
Q1:栗林良吏の2026年最新成績は?
A1:NPB公式記録による2026年の最終成績は19試合、7勝6敗、防御率2.89、121回1/3、101奪三振。WHIPは0.93で、2完投、2完封を記録した。
Q2:栗林良吏が抑えから先発に転向した理由は?
A2:右肘手術後のコンディションや2025年の救援での登板負担、広島の先発投手陣の強化が主な背景。社会人時代に先発経験があり、制球力や複数の球種なども評価された。
Q3:栗林良吏は2021年に何セーブを記録した?
A3:2021年は37セーブ。プロ野球新人シーズン最多セーブタイ記録を達成し、セ・リーグ新人王にも選ばれた。
Q4:栗林良吏の通算セーブ数は?
A4:2026年シーズン終了時点で134セーブ。NPBの歴代通算記録では23位、現役投手のランキングでは5位となっている。
Q5:栗林良吏の出身高校と大学は?
A5:愛知黎明高校、名城大学を経て、社会人野球のトヨタ自動車に所属。その後、2020年ドラフト1位で広島東洋カープに入団した。
Q6:栗林良吏の背番号は何番?
A6:広島東洋カープでの背番号は20。2026年も背番号20の投手として登録されている。
Q7:栗林良吏は2026年にセーブを記録した?
A7:2026年は先発に転向したため、公式戦のセーブは0。これまでの通算134セーブは、2025年までに積み上げた記録である。
栗林良吏の2026年は、広島の守護神から先発投手へと役割を変えた大きな転換点だった。
19試合、7勝6敗、防御率2.89、101奪三振、WHIP0.93という成績は、新しい役割への適応を示す数字である。
一方、8月以降の投球内容には波があり、先発として年間を通して安定した成績を残すための課題も見えてきた。
2021年の新人王、37セーブの新人タイ記録、2024年の38セーブ、そして通算134セーブ。これらは栗林がNPBを代表する救援投手の一人として積み重ねてきた実績だ。
しかし、2026年の挑戦によって、その評価軸は変わり始めている。
今後の栗林を評価する際には、セーブ数だけではなく、投球回、QS率、防御率、WHIP、奪三振と与四球のバランスを見ることが大切だ。
プロの結論は、2026年の先発転向は新しい可能性を示した一方、まだ完成形ではないということ。
守護神として培った勝負強さと、先発として必要な試合を組み立てる能力。その両方を融合できれば、栗林良吏は広島の先発陣にとって、長期的に大きな価値を持つ投手になり得る。
主な根拠資料・記録
- NPB公式・栗林良吏の個人年度別成績、2026年シーズン終了時点。
- NPB公式・2021年新人王発表、37セーブの新人記録。
- NPB公式・2026年通算セーブランキング。
- 日刊スポーツ・2025年10月18日付、先発転向の背景。
- スポニチ・2026年2月14日付、先発転向に関する本人インタビュー。
- NPB公式・2026年5月12日付、先発転向後の投球内容と本人の考え。
- 愛西市公式・栗林良吏の出身校と経歴。