フィギュアスケートペアの採点は、技の難しさだけでなく、実際にどれだけ正確かつ美しく実施できたかを評価する仕組みです。
基本となるのは、次の3つです。
1. 技術点(TES)
2. 出来栄え点(GOE)
3. 演技構成点(PCS)
技術点は、プログラムに組み込まれた技の基礎点と、実施内容に応じた出来栄え点によって決まります。
基礎点は、ジャンプの回転数やリフト、スピン、ステップの難易度などによって異なります。
例えば、同じジャンプでもダブルとトリプルでは回転数が異なり、基礎点も変わります。
ペアの場合は、女性の空中姿勢や男性の支え方、2人のタイミングなども技の評価に関係します。
GOEは技の出来栄えを評価する点数GOEは「Grade of Execution」の略で、日本語では出来栄え点と呼ばれます。
評価は-5から+5までの11段階です。
| 評価 | 意味 |
|---|---|
| +5 | 非常に優れた実施 |
| +3〜+4 | 高い完成度 |
| +1〜+2 | 良好な実施 |
| 0 | 標準的な実施 |
| -1〜-2 | 小さな問題がある |
| -3〜-4 | 明確なミスがある |
| -5 | 大きな問題がある |
GOEは単純に基礎点へ評価数字を足し引きする仕組みではなく、技ごとに定められた換算方法で得点に反映されます。
ペアでは、特に次の部分に注目すると評価の違いが理解できます。
- リフトの上げ下ろしが滑らかか
- ツイストリフトの高さとキャッチが安定しているか
- スロージャンプの着氷がきれいか
- 男女のジャンプの高さやタイミングがそろっているか
- デススパイラルで女性の低い姿勢が維持されているか
PCSは「Program Component Score」の略です。
2026-27シーズンのISU採点では、次の3項目で評価されます。
1. 構成(Composition)
プログラムの振付、技の配置、音楽との構成、リンクの使い方などを評価します。
2. 演技(Presentation)
表現力、音楽への没入感、動きの対比、2人の調和などを評価します。
3. スケーティングスキル(Skating Skills)
エッジの使い方、滑走の流れ、スピード、バランス、コントロールなどを評価します。
特にペアでは、2人がそれぞれの項目を同等に示しているかが重視されます。
片方だけが美しく滑っていても、もう片方との動きがかみ合わなければ、ペアとしての完成度は高く評価されません。
最終得点はどう計算される?基本的な仕組みは次のとおりです。
技術点(TES)
各技の基礎点+GOE
演技構成点(PCS)
構成+演技+スケーティングスキル
各種減点
転倒などの規定に基づく減点
ショートとフリーの合計点

2つの演技の得点を合算して順位を決定
なお、PCSには各項目に応じた係数が適用されます。したがって、3項目の点数をそのまま単純に足すわけではありません。
ここで大切なのは、難しい技を成功させることと、演技全体の質を高めることは別の評価だという点です。
高難度のツイストやリフトを成功させても、演技の流れやスケーティングが不十分なら、総合的な評価で差が生まれます。
【ペア結成の条件と経緯】男女の相性はどうやって決める?
ペアスケーターは、最初から男女2人で競技を始めるとは限りません。
シングルから転向する選手もいれば、別のパートナーと組んでいた選手が新しい相手を探すケースもあります。
ペア結成に必要な5つの条件ペア結成にあたって、特に重要になるのは次の要素です。
1. スケーティング技術
2人が同じスピードで滑り、同じタイミングでジャンプやステップを行えることが基本です。
2. 身体的なバランス
リフトやツイストでは、男性が女性を安全に支えられる筋力と、女性が空中で身体をコントロールできる能力が大切です。
身長差や体格は選考の参考になりますが、競技規則で決められた固定の身長差はありません。
3. 技術的な相性
ジャンプの踏み切り、回転の癖、滑走スピードなどが合うかどうかも重要です。
4. 信頼関係とコミュニケーション
空中に身体を預ける技があるため、お互いの動きを理解し、安心して演技できる関係が欠かせません。
5. 練習環境と競技への意欲
ペア競技には専門的な指導や練習環境が必要です。国内外の拠点、コーチとの関係、長期的な競技計画も結成後の成長を左右します。
男女の恋愛関係である必要はありません。競技上のパートナーとして、互いの技術と信頼を築くことが大切です。
りくりゅうはどうやって結成された?日本のペア競技を大きく変えた三浦璃来・木原龍一組は、2019年8月に結成されました。
2人はそれぞれ別のパートナーと競技していた経験があり、三浦は女子シングルからペアへ転向した選手、木原は男子シングルからペアへ転向した選手です。
JOCの2026年インタビューによると、三浦が木原に声をかけたことが新しいチームの始まりでした。
共通の知人だったアイスダンサーの小松原美里から木原の人柄を聞き、三浦がアプローチ。トライアウトを経て、2人でチームを組むことになりました。
木原もトライアウトの際に、一緒に滑ることへの手応えを感じたと振り返っています。
この事例から分かるのは、ペア結成では年齢や経歴だけでなく、実際に滑ったときの相性が重要だということです。
長岡柚奈・森口澄士組の結成経緯現在の日本ペアを支える長岡柚奈・森口澄士組も、トライアウトを通じて誕生したチームです。
2人は2023年4月に行われたペアのトライアウトに参加しました。
当時、森口は別のパートナーと組んでいた経験があり、長岡はシングルを中心に活動していました。
トライアウトで長岡のリフト技術やスケーティングに可能性を感じたことが、ペア結成につながりました。
2023年5月には新ペア結成が発表され、愛称は「ゆなすみ」となりました。
ペア結成は、単に男女を組み合わせるだけではありません。実際に技を試し、身体的な相性と技術的な可能性を確かめながら、長期的に成長できる相手を見つける過程なのです。
【日本代表の歴代・現在】りくりゅう引退後の2026年最新勢力図
日本のペア競技は、シングルに比べると競技人口や強化環境の面で課題を抱えてきました。
それでも、長年にわたる選手たちの挑戦によって、世界大会で結果を残すチームが生まれています。
フィギュアスケートペアの歴代日本代表日本のペア競技を振り返るうえで、重要な選手とチームは次のとおりです。
- 長沢琴枝・長久保裕組: 1972年札幌ではなく、1972年札幌ではなく1972年札幌大会ではない。1972年札幌五輪で日本代表として出場した歴史的ペア。
- 井上怜奈・小山朋昭組: 1992年アルベールビル冬季五輪に出場。
- 荒井万里絵・天野真組: 1998年長野冬季五輪に出場。
- 高橋成美・マーヴィン・トラン組: 2010年世界ジュニア選手権銀メダル、2012年世界選手権銅メダル。日本ペア初の世界選手権メダルを獲得。
- 高橋成美・木原龍一組: 2014年ソチ冬季五輪に出場。
- 須崎海羽・木原龍一組: 2018年平昌冬季五輪に出場。
- 三浦璃来・木原龍一組: 2022年北京冬季五輪7位、2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪金メダル。
- 長岡柚奈・森口澄士組: 2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪に出場。
なお、三浦・木原組の前身となる木原のパートナーには高橋成美、須崎海羽がいます。選手の経歴を見ると、同じ選手が異なるパートナーと組みながら競技を継続してきたことが分かります。
また、高橋成美・マーヴィン・トラン組は、五輪代表とは別に日本ペアの世界選手権での歴史を切り開いた重要な存在です。ISUの選手記録では、2007年7月の結成と2012年の世界選手権銅メダルが確認できます。
りくりゅうが残した2026年の歴史的快挙2026年2月のミラノ・コルティナ冬季オリンピックは、日本のペア競技にとって歴史的な大会となりました。
三浦璃来・木原龍一組は、ショートプログラムで5位となった後、フリースケーティングで大きく巻き返し、日本勢初のペア金メダルを獲得しました。
加えて、フリーでは世界歴代最高得点を記録しました。
2人は北京2022冬季五輪ではペア7位となり、2022年世界選手権で銀メダル、2023年世界選手権と2025年世界選手権で優勝するなど、世界のトップチームとして実績を積み重ねてきました。
しかし、金メダル獲得後の2026年4月17日、2人は今季限りでの現役引退を発表しました。
JOCが報じた発表内容では、競技人生に区切りをつけながらも、今後は2人で新しいことに挑戦し、日本の人々にペア競技を知ってもらいたいという意向を示しています。
この引退は、単なる一組の選手の競技生活の終了ではありません。
日本のペア競技が世界一に到達した直後に、その次の世代がどのように競技を引き継ぐかという新しい課題が生まれたことを意味します。
2026-27シーズンの日本代表は長岡柚奈・森口澄士組2005年7月13日生まれ。北海道出身。木下アカデミー所属。
2001年12月29日生まれ。京都府出身。木下アカデミー所属。
2026年11月3日時点で、日本スケート連盟の2026-27シーズン強化選手ページには、ペア特別強化選手として長岡柚奈と森口澄士の名前が掲載されています。
2人の主な実績は次のとおりです。
- 2025年全日本選手権優勝
- 2026年四大陸選手権3位
- 2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪19位
- 2026年世界選手権4位
特に2026年世界選手権4位は、五輪後の新体制で世界の上位に食い込んだことを示す重要な結果です。
また、2026-27年のISUグランプリシリーズでは、中国杯とNHK杯への出場が予定されています。
つまり、りくりゅうが引退した後の日本ペアを担う中心的なチームとして、ゆなすみの成長が期待されています。
今後の注目点は、世界選手権で表彰台を狙える安定性をどこまで高められるかです。
特にスロージャンプの着氷、フリー後半の体力、リフトやツイストの完成度は、世界トップとの差を縮めるうえで要点になります。
【よくある質問】フィギュアスケートペアに関するFAQ
Q1:フィギュアスケートのペアとアイスダンスは何が違う?
ペアはジャンプ、ツイストリフト、スロージャンプ、デススパイラルなどのアクロバティックな技を行います。アイスダンスはダンスやステップ、エッジワークが中心で、ジャンプやリフトには厳しい制限があります。
Q2:フィギュアスケートペアで最も難しい技は何?
一つに決めることはできません。トリプルツイストは空中での回転とキャッチ、スロージャンプは高い跳躍と安定した着氷、デススパイラルは低い姿勢と正確なエッジコントロールが大切です。技ごとに異なる難しさがあります。
Q3:2026年現在、日本のフィギュアスケートペアの代表は誰?
2026-27シーズンの日本スケート連盟のペア特別強化選手として掲載されているのは、長岡柚奈・森口澄士組です。三浦璃来・木原龍一組は2026年4月に現役引退を発表しました。
フィギュアスケートペアは、シングルの技術を土台に、男女2人でしか実現できないリフトやツイスト、スロージャンプ、デススパイラルなどを組み合わせる競技です。
アイスダンスとの最大の違いは、アクロバティックな技が認められていること。シングルとの違いは、個人の技術に加えて、パートナーとの同調性や連携が採点に大きく関係することです。
2026年は、三浦璃来・木原龍一組が日本ペア初のオリンピック金メダルを獲得し、その後に現役引退を発表した歴史的な年となりました。
一方、長岡柚奈・森口澄士組は世界選手権4位、四大陸選手権3位という実績を残し、2026-27シーズンも国際大会に挑戦しています。
観戦するときに注目したいのは、技の高さだけではありません。
- リフトで女性の姿勢が安定しているか
- ツイストリフトの空中姿勢とキャッチが美しいか
- スロージャンプの着氷後に流れが続いているか
- デススパイラルで2人の軸とエッジが安定しているか
- 演技全体を通して2人の動きが一つになっているか
こうしたポイントを意識すると、ペア競技の奥深さが見えてきます。
りくりゅうが切り開いた日本ペアの新しい歴史を、ゆなすみをはじめとする次世代の選手たちがどう発展させていくのか。2026-27シーズンは、その未来を見届けるうえでも重要なシーズンです。